世界各国で導入され始めている反面、日本ではまだまだ馴染みが薄い「STEM教育」。ここでは具体的なSTEM教育の概要をはじめ、STEM教育の重要性やSTEM教育の一環としておすすめの習い事をまとめました。同時に、世界各国のSTEM教育の導入事例も紹介します。
STEM教育とは
STEM教育とは、幼少時から科学や技術、工学や数学などの理系分野に触れさせる教育システムの総称です。科学・技術・工学・数学の英語の頭文字を取って「STEM教育」と称されています。理系分野の教育に注力し、これからのグローバル社会とIT社会で活躍できる人材を育てることを目的としています。
とはいえ、単に科学やIT分野に優れた人材を育てることだけがSTEM教育のゴールではありません。STEM教育の真の目的は、「自発性や創造性、判断力を持った子ども」を育てることにあります。さまざまな理系教科を通して、子どもの問題解決能力を高めることがSTEM教育の本質だといえるでしょう。STEM教育はアメリカをはじめ、ヨーロッパやアジアの新興国にも広がりをみせています。日本でSTEM教育が知られるようになったきかっけは、オバマ元大統領にあります。就任間もないころの大統領が「STEM教育に注力する」と宣言したことがメディアで紹介され、日本でも知られるようになりました。
また、従来のSTEM教育に「Arts(リベラルアーツ)」を加えた「STEAM教育」を提唱する動きもあります。リベラルアーツとは哲学や芸術、外国語や倫理学などさまざまな科目に触れ、自分の中の引き出しを増やす(=教養と思考力を強化する)ことを目的としている科目・教育スタイルです。
STEM教育の各分野の目的
STEM教育で学ぶ分野は、科学・技術・工学・数学です。それぞれの分野が持つ目的と役割は、以下のとおりです。
科学:Science
観察や実験を通して、物事に法則性を見つけ出す力、探求力を養います。また、科学を通した問題解決能力や判断力を習得することも目的としています。
技術:Technology
さまざまな事象や物事に対し、最適な条件を見つけ出してモノづくりへ反映する力を養います。
工学:Engineering
モノづくりに対する興味関心を育てて、より良い仕組みづくりに挑戦する力を育てる分野です。工学の技術は日常生活だけでなく、医療や福祉などさまざまな分野に関わる理系科目です。広い視野を持って工学を学ぶ姿勢が求められています。
数学:Mathematics
数値を論理的に捉え、そこから得たデータを使いこなす力を育てる分野です。同時に、論理的な思考を育成することで、問題解決能力を高めることも目的としています。
STEM教育ではこれらの理系分野を学ぶことで、技術をはじめ判断力や創造性を持った人材を育成できるとしています。1つの分野に特化したスペシャリストを育成するというよりも、理系分野を幅広く総合的に学ぶ方針となっています。
総合的な理系知識が重視されている背景には、近年の科学技術やIT技術の進歩が大きく関わっています。現在は昔と違い、「さまざまな技術を連携させなければ、望むものが開発できない」という状況に直面しているのです。
以前までは「1つの分野に特化したスペシャリストが開発に携わり、モノのスペックを上げていた」というケースが一般的でした。たとえば、かつてのガラケーは、バッテリーの寿命やカメラの画素数など、ピンポイントなスペック向上のニュースが目立っていました。しかしスマホになると、「AIによるサポート機能の搭載」、「カメラとアプリの連携機能付」など複数の技術が合わさった結果、スペックが向上しています。ガラケーとスマホの例からわかるとおり、現在のモノは複数の技術が組み込まれることで性能がアップしているのです。そのためには、総合的な理系分野の知識がないと成り立たないという状況があります。こうした背景もあり、STEM教育の重要性が認識されるようになってきたのです。
世界と日本のSTEM教育
STEM教育は、アメリカをはじめ世界各国で導入されています。以下では、STEM教育に特に力を入れている国の事例をいくつか紹介します。
アメリカの事例
アメリカでは国家戦略として、2000年代からSTEM教育を推進してきた背景があります。ただし、改めてSTEM教育の重要性を説いたのがオバマ元大統領です。同氏は「科学の地位を本来あるべきところへ戻す」とし、STEM教育により注力するとスピーチしました。
2015年度のSTEM教育関連予算は、29億ドルにのぼると発表されました。STEM分野の専門教員を10万人増加、同分野を学ぶ卒業生を100万人増加させるという結果を10年間で出しています。同時に適切な学習方法や指導方法の研究、教育体制の見直しなどの政策も実施されました。現在では幼少期からパソコンやタブレットへ触れたり、授業でプログラミングを学んだりといった環境も整っています。授業で研究用ロボットを組み立てたり、青少年を対象にしたロボットコンテストへ出場するチャンスが与えられたり、楽しみながらSTEM分野に触れられる環境が整備されています。
インドの事例
インドといえば、数学やITなどの理系教育に注力していることで知られています。たとえば、2015年には、6~18歳の児童・生徒を対象としたプロジェクト「Rashtriya Avishkar Abhiyan」を開始しています。これは、科学技術や数学などの理系分野を総合的に学べる学習プロジェクトです。2016年時点で、インドにおけるSTEM分野の学士号を取得した学生数は260万人にのぼると発表されました。これは中国に次いで、世界2位にあたる数字です。STEM教育を受けたインド系の著名人としては、GoogleのCEOであるサンダー・ピチャイ氏があげられます。
シンガポールの事例
シンガポールでは、1997年に探求型学習の重要性が提起されるようになりました。これがSTEM教育の先駆けになったとされ、政府によるサイエンスセンターも設立されています。2014年には「STEM Inc」を設立し、すべての中学生へ向けたSTEM教育プログラムを提供。同プログラムではSTEM教育の専門家やエンジニアが学校へ赴き、授業をサポートしたり、カリキュラムを作成したりといった支援を実施しています。また、「その分野が実社会でどのように活かされているか」という観点を重視しているのもシンガポールのSTEM教育の特徴です。学習分野を実生活と結び付けることで、より実践的な知識や技術が学べるようになっています。
韓国の事例
2013~2017年に「第2次科学技術基本計画」を実施した韓国。同計画はSTEM教科書の導入をはじめ、科学分野の英才教育計画や理工学系ビジョンの提示を盛り込んだものでした。具体的には、小中学生を対象にした英才教育院の設立があげられます。これは放課後や週末の時間を活かして、STEM分野の英才教育を実施する機関です。小中学校内にも「英才学級」を導入する取り組みを実施し、STEM教育の浸透に努めています。
日本のSTEM教育は遅れを取っている
日本でも、理系分野の教育に注力する動きが活発化しています。「日本STEM教育学会」をはじめとする関連研究機関の設立や、スーパーサイエンスハイスクールの支援などの取り組みが具体的な事例です。しかし他国に比べると、日本のSTEM教育はやや遅れているのが実情といえます。小中学校におけるパソコンやタブレットの浸透率が低く、環境が十分に整備されていないことが原因として考えられます。
STEM教育の一環としておすすめの習い事
近年、プログラミング教室や科学教室など、子どもを対象とした理系の習い事が注目されています。STEM教育の一環として、子どもが楽しみながら学べるおすすめの習い事を紹介します。
プログラミングスクール
プログラミングは、小学校で2020年から必修化した科目です。子ども向けのプログラミングスクールも増えてきています。子ども向けのプログラミングスクールでは、ゲーム感覚で楽しみながらプログラミングを学べるのが魅力です。なかでも、画面上のアイコンや画像を並べたり組み合わせたりしてプログラミングの基礎を学ぶ「ビジュアルプログラミング」が人気です。
子ども向けプログラミングスクールはIT企業が主催している教室、パソコンメーカーが運営している教室、専門学校が母体となっている教室などさまざま。スクール選びに迷ったら、子どものスキルや興味・適正に合った指導をしてくれそうなところを選ぶと良いでしょう。また、「PC初心者歓迎」、「少人数制でじっくり学べる」など、各スクールの特色を把握しておくことが大切です。
モノづくり・ロボット作り教室
プログラミングのほか、モノづくりに興味がある子どもにはロボット教室がおすすめです。STEM教育におけるモノづくりはプログラミングで数値上の仕組みを作る力だけではなく、「自分で考えて作り、実際にモノを動かす」という創造性・実行力も養えます。ロボットを想像通りに動かすためには、距離や加速度、角度など高度な理数の概念を学ぶ必要があります。モノづくり教室やロボット教室では楽しみながらそれらの概念を学べ、エンジニアとしての思考力も鍛えられます。
くわえて、自分で作ったモノが実際に動いたときの喜びや達成感を味わえるのも大きな魅力です。大きな達成感を味わうことで自信につながり、「もっといろいろな仕組みを知りたい」、「より良くしたい」というモチベーションのアップにもつながります。
科学実験教室
STEM教育の一環として、子ども向けの科学実験教室を実施しているところも多くみられます。机に向かって勉強するのではなく、実験やフィールドワークを通して科学の面白さ・奥深さを学べます。「なぜこの事象が起こるのか」という科学的思考力や、疑問をとことん追求する探究心も養えます。植物や動物、音や光など身近なモノ・現象にフォーカスした学習内容なので、幼児~小学生でも楽しく科学的思考を身につけられ、なかにはプログラミングや英語など、複数の分野と組み合わせたカリキュラムを導入しているところもあります。
STEM教育以外にもある、新しい教育スタイル
近年はSTEM教育だけでなく、STEM教育から派生したさまざまな教育スタイルも注目されています。なかでも最近広まっている教育スタイルとその特徴を、以下でまとめました。
STEAM
STEM教育に、芸術科目や教養科目を足した教育方針です。絵画や音楽などの芸術科目に触れることで、創造性だけでなく「何を幸せとするのか」、「何を美しいと思うのか」という哲学的思考を養えます。そこで培った教養を理系分野のテクノロジーを融合させ、より良い世界や環境を作っていくことがSTEAM教育のゴールです。
STREAM教育
STREAM教育は、前述したSTEAM教育にR(ロボット技術)を加えた教育方針のことです。ロボット工学の知識や設計に必要な思考力を身につけ、ロボット技術の向上に貢献する人材を育成します。
E-STEM
E-STEM教育は、STEM教育にEnvironmental(=環境教育)を足した教育方針を指します。環境教育で学ぶ分野はさまざま。森林破壊や公害、異常気象など自然環境を取り巻く問題だけでなく、ヒトとITの関わりや生活環境について学べます。これから必要とされる人材は、知識や技術だけでなく「ヒトや自然に配慮できる思考力」を持った人材だとされています。E-STEM教育はその考え方に基づき、理系技術だけでなく幅広いジャンルの環境教育も展開しているのです。
GEMS
GEMSは、「Girls in Engineering Math and Science」の頭文字を取った略語です。「girls」という単語からわかるとおり、女性のSTEM分野進出を支援するプログラムです。女性のSTEM分野進出をサポートすることで、女性の社会進出や男女平等を実現できるという理念が掲げられています。そのほか「Great Explorations in Math and Science」の略語としても使われているのもポイントです。こちらでは、科学と数学の概念を楽しく学べるプログラムが展開されています。
パソナフォスターでは、子どもたちの居場所・学びの場としての学童クラブ「Miracle Labo」を展開しています。
東京学芸大学との共同研究のプログラムを提供しているMiracle Laboは、対話を中心とした「問題解決型学習」や、英語で思考する力を磨く「STEM英語」など様々なプログラムを用意しています。夏休みをはじめとした長期のお休み期間中は、終日のプログラムも実施しています。
第17回キッズデザイン賞 優秀賞受賞「Miracle Labo」
パソナフォスターが運営する教育型アフタースクール「Miracle Labo」は、「第17回 キッズデザイン賞(主催:キッズデザイン協議会、後援:経済産業省、内閣府、消費者庁)」において、優秀賞として消費者担当大臣賞を受賞いたしました。
Miracle Laboの詳細はこちら
また、パソナフォスターでは、企業の従業員様とそのお子さんたちへ向けた「Miracle Holiday」も実施しています。
夏休み・冬休み・春休みなど長期休み、社内イベント時に預かり先が必要となった際などに活用いただけるのが魅力です。社内の空きスペースに会場を設置することもできるので、従業員様も安心して、仕事に専念できます。
コンテンツも充実していて「英会話」「STEM教育」「からだづくり」「SDGs」など多彩なプログラムで、お子さんたちにいつもと違う特別な体験をさせることが可能です。
Miracle Holidayの詳細はこちら