保育実習生が担当する「部分実習」は、指導案をもとに活動内容を決定します。ここでは部分学習における指導案の書き方や目的、指導案のサンプルを解説します。同時に、指導案作成時に意識しておきたいポイントもまとめました。
部分実習とはどのような実習か?
部分実習とは、保育実習生がメインとなって保育を担当する実習のことです。1日を通して保育をするのではなく、1日のなかの決められた時間で保育を行います。部分実習の場には保育士もいますが、保育士の役割はあくまで補助役や指導役です。時間が決められているとはいえ、子どもたちを相手にして実際に保育を行う、責任重大な実習だといえます。
子育て支援員は、保育士と同じく保育や子育てに関わる仕事です。双方には、必要な資格や細かい仕事内容に微妙な差異があります。子育て支援員の資格を取得するためには、全国共通の「子育て支援員研修」を受講・修了する必要があります。子育て支援員の資格は民間資格であるため、研修を受講するにあたって、経験や学歴などはとくに問われません。経験・学歴・資格の有無で保育の仕事に就くことを諦めていた方にとって、子育て支援員になることは大きなチャンスだといえるでしょう。
部分実習とはいっても、実際の活動は普段通りの保育と変わりません。絵本や紙芝居を読み聞かせたり、お絵描きや工作をしたりして、子どもたちと過ごします。保育実習の実施時間は、園によって様々です。朝の会の直後に行う園もあれば、帰りの会の前や子どもたちが同じ活動に一斉に取り組む「一斉保育」の前に行う園もあります。部分実習と同じく、保育実習生が経験する実習が「責任実習」です。責任実習は決められた一部の実習ではなく、1日を通して子どもたちの保育を行う実習のことです。自信を持って責任実習に臨むためにも、部分実習で経験を積むことが大切だといえます。
部分実習ではどんな活動を行うのか?
部分実習とはいえど、以下のように、活動内容は普段通りの保育と変わりありません。
- 絵本や紙芝居の読み聞かせ
- 集団での遊び
- お絵描きや工作
- エプロンシアター
- ピアノで弾き歌い
など
「子どもたちとこんな遊びをして過ごしたい」、「こんな保育をしたい」という活動内容を考えて、そのアイデアをもとに部分実習の指導案を作成していきます。また、子どもたちの発達は年齢によって大きく異なります。よって、子どもたちの年齢や発達も考慮に入れて活動内容を考えることが重要なのです。
部分実習で必要となる「指導案」の内容
部分実習では、実習で行う保育活動の内容をはじめ、子どもたちへの配慮や働きかけなどを具体的に記載する「指導案」を作成します。指導案には、ただ活動内容を記載すれば良いというわけではありません。活動を通したねらいを決めたうえで、「そのねらいを実現するためにはどのような環境にすべきか」、「どのように補助すれば子どもたちが意欲的に活動を楽しめるか」などの点を考えなければならないのです。
長期指導案と短期指導案
保育における指導案には「長期指導案」と「短期指導案」があります。長期指導案はさらに1年間の保育計画を盛り込む「年間計画」と、月単位の細かい保育計画を記載した「月案」の2種類に分けることができます。対する短期指導案には、週単位の保育計画を記載する「週案」と1日単位の保育計画を記載する「日案」、決められた時間で行う保育計画を記載する「部分案」があります。部分実習で作成するのは、この部分案です。
指導案の作成手順
ここでは、部分実習の指導案を作成する際の手順を紹介します。実習先の保育園によって、やや手順が異なる可能性もありますが、おおむねの手順は以下の通りです。
【手順①】保育園の規則や決まりをチェック
指導案を作成する前に、まずは、保育園の規則や決まりを確認しましょう。とくに外遊びや集団遊びのルール、クラスごとのルールは園によって細かな差異があります。「せっかく指導案を作成したのに、規則を確認したら大幅な修正が必要になってしまった」という状況にならないためにも、事前にルールを確認しておくことが大事です。
また、園の保育方針をチェックすることも効果的です。たとえば、食育を大切にしている園であれば、「食べ物の大切さがわかる絵本や紙芝居の読み聞かせ」というように、保育方針に合った活動を部分実習の指導案に取り入れることができます。
【手順②】クラスや子どもたちの様子をチェック
保育園の規則やルールのほか、クラスの人数や雰囲気、子どもたち同士の関係もチェックしましょう。たとえば、園で預かっている子どもの人数がわかれば、人数に合った活動内容や環境構成を考えやすくなります。子ども同士の関係、配慮が必要な子どもの情報を把握すれば、子どもたちが楽しめる遊びを取り入れられるでしょう。
【手順③】実際に指導案を作成
「実習先の規則やクラスの雰囲気、子どもたちの様子が掴めたら、形式に従って実際に指導案を作成します。子どもたちの好みや発達具合を鑑みたうえで、「ねらい」を立て、どのような活動や遊びを盛り込むかを考えていきます。
保育園では週案や日案があらかじめ立てられているため、それらの流れから大きく逸れないように注意して、部分案を作成しましょう。不安な場合は、クラス担任の保育士に指導案を提出して、アドバイスをもらうのが有効です。遅くとも部分実習実施の1~2週間前には提出し、助言を仰ぐのが良いでしょう。
【手順④】指導案の修正・再考
保育士から指導・アドバイスを受けたら、その内容に基づいて指導案を修正していきます。修正作業中は、「アドバイスに基づいて修正したが、この方向性で問題ないか」、という認識のすり合わせを忘れずに行うことが大切です。修正案は、部分保育を実施する3日前には提出するように心掛けます。
【手順⑤】副案を作成する
せっかく指導案を作成しても、やむを得ない事情で活動内容を変更しなければならないことがあります。とくに外遊びは、天候や外の様子に左右されてしまうため、副案をあらかじめ作っておくと安心です。
「どんな教材が必要になるか」、「どれほどの量が必要そうか」、「各家庭やほかの先生方の協力が必要な教材はあるか」といった点を、しっかり考えたうえで教材の準備を計画しましょう。
部分実習の指導案の書き方
指導案には「活動内容」のほか、「環境設定」や「保育活動の流れ」など様々な項目があります。以下にて、指導案の具体的な書き方を項目ごとに解説します。
活動内容
活動内容の項目には、どんな活動・遊びをするのかを具体的に記入します。そのうえで、「活動を通して得られる経験」、「この遊びを通して体験できる達成感や満足感」など、子どもたちの内面に関する事柄も記していきます。活動内容を書く際は、以下のポイントを意識すると良いでしょう。
- 絵本や紙芝居の読み聞かせ
- 集団での遊び
- お絵描きや工作
- エプロンシアター
- ピアノで弾き歌い
ねらいの書き方
活動や指導内容のねらいは、「お友達との集団遊びに慣れる」、「想像力や感受性を豊かにする」など、活動を通して得られるものや目的を軸に記入するとわかりやすいでしょう。「子どもたちにどんなことを身につけてほしいか」、「どんな体験をしてほしいのか」といったポイントも、ねらいを決める際に役立ちます。
保育士と子育て支援員にはどのような違いがある?
保育士と子育て支援員は、どちらも保育に関わる職業です。ただし、必要な資格や働き方、細かい業務内容に違いがあります。
以下では、具体的な相違点を、いくつかあげてみました。
環境構成の記載
指導案の環境構成とは、保育環境の想定や考案をすることです。保育園の設備や教室の広さなどを鑑みたうえで、環境構成を考えます。また、「どのような教材が必要か」、「どんな環境であれば子どもたちが集中して取り組めるか」といった点を考えることも重要です。同時に、設備や教材、用具の安全性の確認も忘れずに行いましょう。
保育の流れと活動の時間配分
子どもたちが1日をどのように過ごしているのかを考えたうえで、保育活動の流れと時間配分を計画します。とくに、子どもたちの集中力にはバラつきがあります。色々な遊びを楽しみたい子や、気に入っている1つの遊びに集中したい子など様々です。子どもたち全員を飽きさせないためにはどうすれば良いか、どのような時間配分をすればメリハリをつけて楽しめるか、などの点を考慮しましょう。
部分実習の指導案を作る際に意識しておくべきポイント
指導案を作成する際は、活動のねらいや園の環境など、意識すべきポイントが多くあります。とくに意識しておくべきなのは、以下の4つです。
年齢・発達に見合った活動を考える
活動内容を考える際は、子どもたちの年齢や発達に見合っているか否かを念頭に置く必要があります。難しすぎたり、逆に簡単すぎたりすると、子どもたちが楽しめません。とくに年齢は、絵本や紙芝居、ゲームを取り入れる際の1つの基準となります。
環境構成はできる限り細かく書く
環境構成は、実習の本番をシミュレーションするのに欠かせない要素です。活動を行う教室の広さや、必要な机や椅子の数をきちんと認識したうえで、環境構成を考えることが重要になります。絵本の読み聞かせをするのであれば、何の絵本を読むのか、工作をするのであればどの材料がどれほど必要なのかなど、教材・道具についてのシミュレーションも忘れずに行いましょう。環境構成を丁寧に書くことで、落ち着いて当日の保育に臨めます。
外遊び・教室遊びのルールを確認しておく
外遊びや教室遊びのルールは、園ごとに異なることがあります。ルールに沿って楽しく活動できるよう、事前確認を念入りに行います。不安な場合は、「子どもたちは普段どんな遊びをしているのか」、「教室を使う際、時間や人数のルールはあるか」と、保育士の方へ直接確認をすると安心です。
また、設備や遊具に関するルールもチェックしましょう。とくに3歳ごろからは体が大きく発達し、思い切り動き回れるようになります。教室遊び、外遊びで思わぬケガにつながってしまうかもしれません。平均台やマット、ボールなどの用具を使おうと考えているのであれば、それらの使用ルールを確認したうえで、安全性に気を配ることが重要です。
子どもたちの反応を予測しておく
子どもたちの反応は、当日になってからでなければわかりません。しかし、子どもたちの反応をある程度予測しておくことは可能です。静かにじっとしていることが苦手な子、遊びの説明をしても理解するのに少し時間がかかる子など、子どもたち1人ひとりの反応を簡単に予想しておきましょう。予想を立てたら、それに対する対応策も一緒に考えておきます。
指導案のサンプル例
指導案のテンプレートは、保育園や在籍している学校によって異なります。ここでは、指導案のサンプルの一例を紹介します。
部分実習指導案〇月〇日〇曜日
指導者名:〇〇〇〇 クラス:〇〇組(4歳児クラス)
活動内容 |
おもちゃのマラカス作り |
活動のねらい |
・飾り付けや色塗りを楽しめる
・音やリズム遊びを楽しめる
・安全に気をつけて工作を楽しめる
|
子どもたちの活動の様子 |
・保育士の作ったマラカスを見る
・保育士から作り方を聞く
・材料を受け取って作る
・紙コップを貼り合わせて音を聴く
・クレヨンやシールで自由にマラカスを飾り付ける
・友達とマラカスの出る音で遊ぶ |
準備する道具 |
・セロハンテープ
・ビーズ
・紙コップ1人2個
・クレヨン
・シール |
環境設定・構成 |
・保育室で行なう
(※机や椅子の配置などを示した図があると良い
・保育者が作ったマラカスや、海外のカラフルなマラカスの写真を用意
・用意する道具の数、保管場所、配る際の方法を記入
・歌のCD |
予想される子どもたちの反応 |
・保育士の説明を聴こうと集まる
・セロハンテープを上手く貼り合わせられない子もいる
・好きなシールやクレヨンを選ぶ
・途中で飽きてしまう子もいる
・作ったマラカスで遊ぶ
|
活動中の配慮 |
・どんな音がするかな?と声をかけてあげる
・子どもたちの様子をみて、必要な補助をする(貼り合わせるのを手伝う、色塗りを手伝う等)
・作った子には「どんな音がするか聴いてみてください」と声をかけてあげる
・早めにできた子に「お友達とリズム遊びをしよう」と声をかける
・全員の分が完成したら、CDに合わせてリズム遊びをしたり歌を歌ったりして遊ぶ |
子どもたちと直接触れ合うことができる部分実習は、期待すると同時に緊張もします。実りのある部分実習にするためにも、事前にしっかりとした知識を身につけて本番に臨みたいものです。
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