児童指導員とは、児童養護施設や障がい児入所施設などの施設で子どもたちをサポートする職業です。ときには子どもたちの親代わりになり、先生にもなる重要な役割を担っています。そんな児童指導員の具体的な仕事内容や、児童指導員として働くために必要な任用資格についてご紹介します。
児童指導員とは?
児童指導員は、さまざまな児童福祉施設で働く職業です。施設に入所、あるいは通所している子どもたちに生活指導を行ったり、障がいのある子どもたちをサポートしたりするのが主な仕事です。ときには勉強を教えたり一緒に遊んだりもします。子どもたちが社会生活をスムーズに送れるように、支えたり見守ったりする役割を担っているのです。児童養護施設をはじめ、障がい児入所施設や乳児院、放課後デイサービスなどが主な活躍の場となります。
どの施設で働くかにもよりますが、サポートを行う子どもたちの年齢層は0~18歳までが一般的です。乳児から青年期まで、幅広い年齢層の子どもたちと関われるのが児童指導員として働くことの特徴としてあげられます。
児童指導員の主な仕事内容
生活指導をしたり保護者や子どもたちの相談に乗ったり、児童指導員の仕事内容は多岐にわたります。主な仕事内容をいくつかピックアップし、まとめました。
生活指導
勉強や遊びを通して、子どもたちが規則正しい生活リズムを送れるように指導・サポートします。障がいのある子どもたちに対しては、発達度合いを検討したうえで支援を行います。ときには悩みを聞いたり相談に乗ったりして、精神的なケアを行います。
集団生活への適応の支援・見守
集会や日々の給食などを通じ、子どもたちが集団生活へ適応できるように支援します。たとえばスポーツの指導を小さなグループ単位に分かれて行ったり、文化的なイベントをグループ単位で楽しんだりするのが一般的です。障がいがある子どもたちに対しては、その特性に配慮したプログラムを計画します。また、施設によっては施設内だけの活動に留まらず、地域との交流プログラムを取り入れているところもあります。その際も児童指導員が中心になってプランニングし、子どもたちの集団生活や発達をサポートします。
個別支援
子どもたち1人ひとりと向き合い、それぞれの課題に合わせた指導を行います。短期目標や長期目標を立てたうえで、子どもたちと一緒になって頑張る力が試されます。たとえば勉強や遊びを通して感情をコントロールする訓練をしたり、宿題や自習のサポートをして勉強の習慣を定着させたりします。障がいのある子どもたちには、発達度合いに合わせて認知機能のアップや感覚機能のアップを図ります。同時に家庭での過ごし方や、施設を出た後のアフターケアについて検討するケースも少なくありません。
これらの支援をする際は、「個別支援計画」と呼ばれるものを作成します。これには「児童が成長するためには何が必要か」、「どのようなサポートが適切か」などの項目が記載されており、それらを踏まえたうえで各種サポートを展開する必要があるのです。
保護者・子どもからの相談への対応
児童指導員は、さまざまな子どもたちと関わる仕事です。子どもとの距離が近いため、子ども本人だけでなく保護者から相談を受ける機会も少なくありません。子どもの相談に乗る際は子どもの意思を大切にしたうえで、伝えたいことや言いたいことをうまく引き出してあげるスキルが求められます。とくに児童発達支援施設では、未就学児と接する機会も多いです。「この子が伝えたいことは何か」、「どんなことを求めているのか」ということにじっくり向き合い、親身に対応する必要があります。
保護者からは、子どもの学習習慣や生活態度に対する相談を受けるケースが多くみられます。また、子どもの年齢によっては進路についての相談を受けるケースもあるでしょう。保護者の心情をしっかり汲みつつも、適切で専門的な助言を行うことが求められます。
各施設との連携
児童福祉施設は、子どもたちが通う学校や児童相談所と連携することもあります。子どもたち1人ひとりに合った支援をするためには、迅速な連携が不可欠です。子どもたちの状況や発達度合い、生活習慣などを各種機関へ正確に共有することが大切です。
その他の事務作業や送迎など
活動記録をつけたり、イベントのプランニングをしたりといった事務作業も児童指導員の仕事の1つ。くわえて「通い」が中心となる通所系の施設であれば、子どもたちの送迎も担当します。
児童指導員として認定されるために必要な「任用資格」とは?
児童指導員の求人には、「無資格応募可」という条件が記載されているケースがあります。無資格であっても就業して児童指導員の業務にあたることは可能です。ただし、公的に児童指導員として認定されるためには、「任用資格」が必要となります。以下で任用資格の概要のほか、取得条件をまとめました。
児童指導員任用資格とは?
児童福祉法の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第43条」によって定められている資格で、学歴や実務要件などの条件を満たすことで取得できます。大学によっては資格証明書を発行してもらうことができますが、履修証明書や実務経験証明書など複数の書類を組み合わせたうえで、児童指導員任用資格を証明するケースが最も一般的です。取得のための具体的な条件は、以下の通りです。
大学や大学院・養成学校などを卒業する
大学で教育学や社会福祉学、心理学、社会学を学ぶ学科を卒業した方は、実務経験がなくても児童指導員任用資格を取得できます。また、大学院で同学科の修士号または博士号を授与された方も同様です。海外の大学であっても、同学科を卒業したのであれば任用資格の対象となります。児童指導員を養成する専門の学校については、「都道府県知事の指定する養成施設」という指定があります。児童支援員として実際に働く際は、卒業証明書や学科の履修証明書の所属先への提出が必要となります。
近年は学科の切り分けが複雑化しているため、念のため事業所や自治体へ条件に合致するか否かの確認をすると良いでしょう。また2019年4月に行われた法令変更により、短期大学卒業者は大学卒業者に含まれないため注意しましょう。
実務経験を積む
高校や短期大学を卒業し、なおかつ児童福祉法に沿って運営されている事業所で2年以上(360日以上)の実務経験を積むことで児童指導員任用資格を取得できます。また高校を卒業していない場合でも、同条件の事業所で3年以上(540日以上)実務経験を積み、なおかつ都道府県知事に適切だと認められれば資格を取得できます。実務経験は、事業所が発行する実務経験証明書を提出することで証明できます。高校や大学、短期大学の卒業証明書も必要となるため忘れずに用意しましょう。
実務経験の具体的な対象となる施設は、「第一種社会福祉事業」または「第二種社会福祉事業」となります。「第一種社会福祉事業」は児童養護施設や障がい児入所施設などが該当し、「第二種社会福祉事業」には、放課後デイサービスや児童発達支援事業所、地域子育て支援センターなどが該当します。
教員免許や精神保健福祉士などの資格を取得する
小・中・高の教員免許や精神保健福祉士、社会福祉士の資格のいずれかを取得するのも選択肢の1つとしてあげられます。この場合、資格取得と厚生労働大臣または都道府県知事の認定を受けてはじめて任用資格を取得できます。なお2019年4月からは、幼稚園教諭の免許を持つ人も同様の条件を満たすことで任用資格を取得できるようになりました。
公立の施設に勤務する場合は公務員の資格も必要となる
公立の児童福祉施設で児童指導員として勤務する場合は、公務員試験に合格する必要もあります。各自治体によって試験の要件は異なることもあるため、管轄自治体へ直接問い合わせると良いでしょう。
児童指導員の主な活躍の場
児童指導員は、さまざまな児童福祉施設で活躍できる職業です。主な勤務先は、以下のような施設となります。
児童養護施設
何らかの事情により保護者がいない子どもや、虐待などから保護された子どものための施設です。一般的に、18歳までの子どもたちが暮らしています。施設での共同生活を通して、子どもたちが健やかに自立できるようサポートします。子どもたちの生活のサポートだけでなく、年齢によっては進路相談に乗ったり進学の手助けを行ったりするのも児童指導員の役割です。社会人としてのマナーや常識、スキルを身につけるための就活支援を行う施設も多くあります。
障がい児入所施設
身体的または精神的な障がいを持つ子どもたちが入所する施設です。障がい児入所施設は、「医療型」と「福祉型」の2種類に分けられます。「医療型」では病気の治療や看護に加え、子どもたちの障がいの特性に合った支援・訓練を行います。具体的には、食事をしたり着替えをしたりといった日常生活に必要な能力やコミュニケーション能力の向上・維持を図るためのサポートです。「福祉型」では治療よりも介護と障がいのケア、子どもたちの能力アップに重きを置く傾向があります。
児童発達支援施設
障がいを持つ子どもたちのうち、未就学児を対象とした支援施設です。障がい児入所施設と同じく、こちらも「医療型」と「福祉型」の2種類に分けられ、子どもたちが共同生活を送る入所型よりも、幼稚園や習い事のように通う通所型のサービスが一般的です。児童発達支援施設では、1人ひとりの障がいの状況を見ながら個別支援計画を立て、さまざまな訓練を行います。また、言語聴覚訓練や聴能訓練など、専門知識に基づいたトレーニングを行うケースもあります。施設や提供するサービスによって、児童指導員の業務の幅は変化すると考えると良いでしょう。
放課後デイサービス
障がいがある、または発達に特性のある子どもたちを対象にした施設です。子どもたちの年齢層は小学生から高校生までとなっているのが一般的ですが、施設によっては20歳までと設定しているところもあります。放課後のほか土日、夏休みや冬休みといった長期休暇に施設を開放し、子どもたちに居場所を提供することを目的としています。放課後デイサービスの児童指導員には、子どもたちに勉強を教えたり生活指導をしたりする役割があります。また遊び相手になったり、長期のお休みにはイベントを企画したりするのも児童指導員の仕事です。
児童指導員のやりがいと、大変なこと
やりがいも大変なことも多いのが児童指導員の仕事です。最も大きなやりがいは、「子どもたちの成長を近くで見守れる」ということにあります。子どもたちが苦手なことを克服したり、何でも楽しんで取り組めるようになったりする様子を見て感激する方も多いでしょう。また、落ち着きのなかった子が感情のコントロールの方法を覚えたり、逆に引っ込み思案で大人しい子が意思表示をできるようになったりという、精神的な成長もすぐ近くで見守ることができます。
「子どもたちと信頼関係を築ける」という点も、児童指導員のやりがいの1つ。子どもたちは、性格をはじめ生育環境も好き嫌いも異なります。子どもたち1人ひとりとじっくり向き合うことは大変な仕事ですが、その結果子どもたちから信頼を寄せてもらえるのは大きなモチベーションになるでしょう。「より良い理解者になろう」という意気込みにもつながります。
一方で、児童指導員は体力勝負の仕事でもあります。遊び好きで体力が有り余っている子どもたちを相手にするため、体力を温存できるようにしましょう。
児童指導員の仕事をはじめ、「子どもと関わる仕事がしたい」とお考えの方は多いはず。とはいえ知識も経験もない状態だと、どのようにスキルアップをすればよいのかと悩んでしまうものです。
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