飲食店やホテルなどで働くイメージのある調理師ですが、「保育園の調理師や調理補助にはどんな違いがあるのか」と気になっている方もいるのではないでしょうか。ここでは、保育園で働く調理師や調理補助の役割や、具体的な仕事内容、1日のスケジュール例などをご紹介します。
調理師・調理補助員は保育園でも活躍できる
保育園の調理師や調理補助員は、子どもたちの給食やおやつを調理して提供するお仕事です。子どもたちから見れば「給食の先生」となります。子どもたちがおいしく食べられるような給食やおやつをつくるほか、子どもたちの健康を考えて栄養面に配慮した献立を考えたり、食べやすいように調理したりするのも調理師の役割です。調理補助は、メインで調理を行う調理師のサポート役です。具体的には食材の下ごしらえをしたり、食器や調理器具の準備をしたりします。保育園の調理師・調理補助員は、食育の観点から子どもたちの成長を支えているのです。
調理師と栄養士はどう違う?
調理師と栄養士は、混同されがちな職業といえます。具体的な違いは、重きを置いている技術・知識にあります。調理師にも栄養学の専門知識はありますが、より重きを置いているのは調理の実践技術です。対する栄養士は栄養学のプロフェッショナルですが、調理師のように高度で複雑な調理技術が求められることはあまりありません。病院や社食などの施設では、栄養士が考えた献立をもとに調理師が実際に調理する、という方法で食事を提供しているところもあります。
保育園の調理師・調理補助員の仕事内容
保育園の調理補助・調理補助員は、具体的にどのような業務をこなしているのでしょうか。主な仕事内容と役割をまとめました。
給食・おやつづくり
メインの仕事は、子どもたちの給食やおやつを調理することです。アレルギーのある子どもに専用のメニューで調理したり、乳幼児のための離乳食をつくったりすることもあります。味や栄養バランスを追求することはもちろんですが、子どもたちが食べやすい大きさに食材を切ったり、硬い食材を柔らかく調理したりする工夫も必要になります。
くわえて、年齢と発達にあわせたメニューを考案することも調理師・調理補助員の大事な仕事です。乳児には手づかみで食べられる柔らかいおやつ、2~3歳児にはよく噛んで食べられる少し硬めのおやつというように、保育園で預かる児童の年齢に合ったメニューを考えます。
食育の重要性や魅力を訴求
食育に力を入れている保育園では、調理師や調理補助員が食育を担うことがあります。園庭にある畑で野菜や果物を育てたり、おやつづくりのイベントを企画したりと活動内容はさまざまです。
たとえば、上記の写真では、食育をすると同時に異文化理解を深めるため、世界の料理を写真やイラストで紹介しています。また、食材が持つ栄養素をイラストでわかりやすく解説しています。
こちらは、旬の食材を紹介する掲示パネルです。イラストや折り紙を添えて、旬の食材が持つ栄養素や効果を解説しています。食べることの楽しさはもちろん、「食べて栄養をつけること」、「料理を通じて異文化に触れること」の大切さを子どもたちに紹介しています。子どもたちが楽しく食事をして、食事に興味を持たせるためのきっかけづくりを担っているといえるのです。
食の衛生・安全管理
食の安全や衛生管理を行うのも、調理師の仕事です。子どもたちが安心して食事ができるように食材の保存方法に気を配り、食器や調理器具をしっかり洗浄・消毒します。また、調理室を清潔に保つための清掃も重要な仕事の1つです。なお、食品の提供に携わる職員は、「腸内細菌検査(検便検査)」を受けることが定められております。
食事の配膳・下膳
食事やおやつが出来上がった後の配膳、食べ終わった後の下膳も行います。勤務先が延長保育に対応している場合は、調理から下膳・後片付けまでの作業を1日で複数回繰り返すこともあります。
調理師・調理補助に必要な資格・条件は?
調理師として働くためには、国家資格である調理師免許を取得する必要があります。調理師免許は、調理師試験へ合格するか、調理師養成施設の卒業認定を受けることで取得できます。より具体的には、「2年以上の実務経験を積んだうえで調理師免許を合格する」または「厚生労働大臣が指定する調理師の養成施設で学び、卒業認定を受けたうえで免許申請をする」という条件を満たす必要があります。
保育園の人数によっては「調理師と補助員」の両者を採用しているところも多くみられます。補助員として調理師免許を持たない調理スタッフを設置する保育園もありますが、調理師免許を取得していることは大きな武器になります。とくに「調理師免許をお持ちの方は優遇」などの記載が求人欄にあれば、無資格の求職者に差をつけられるでしょう。未経験であっても調理の仕事には従事できますが、調理師免許があることで給与は上がり、さらなるキャリアアップにもつながります。調理補助員として働く場合、調理師と異なり免許は必須ではありません。
調理師・調理補助員の配置基準はある?
保育園には、調理師・調理補助員の配置基準が定められています。これは、保育所の利用定員を基準に定められているものです。たとえば保育園の定員が40人以下であれば、調理師の配置人数は1人と決められています。保育園の定員が40人以上150人以下であれば調理師・調理補助員の配置は2人、150人以上であれば3人というように、定員の数が増えれば配置人数も多くなる仕組みです。
よくみられるケースが、正社員の調理師1名を中心にパート・アルバイトの調理補助員を数名雇用するケースです。正社員の調理師、パート・アルバイトの調理補助員という雇用形態が一般的ですが、有資格者の調理師については、パートやアルバイトで働けるケースもあります。「ブランクがあるけれど資格を活かして働きたい」という方は、そのような条件の求人を中心に探してみると良いでしょう。
保育園の調理師・調理補助員の1日の例
9時~献立の打ち合わせ・調理器具の下準備
朝は当日の献立について打ち合わせを行い、それに合わせて調理器具の準備を始めます。
10時~下ごしらえ・調理・アレルギー情報の確認
10時~11時ごろにかけて、食材の下ごしらえや調理がスタートです。同時に、子どもたちのアレルギー情報の最終確認も行います。子どもたち全員においしい食事を楽しんでもらうためには、アレルギー情報や健康情報の把握は欠かせません。準備が整ったら、通常の給食にくわえ、離乳食の下ごしらえや調理も行ないます。
離乳食は、子どもの月齢に合わせた調理が求められます。たとえば生後5~6ヶ月の赤ちゃんが食べる離乳食は「離乳食初期」と呼ばれ、裏ごしした食材を使った柔らかい離乳食などが定番です。子どもの月齢に合わせ、離乳食中期(生後7~8ヶ月頃)離乳食後期(9~11ヶ月頃)も提供します。
12時~盛り付け、配膳、調理室や器具の清掃
調理した給食を盛りつけて配膳し、子どもたちに食べてもらいます。その後は調理室や調理器具の清掃・消毒をします。
13時~下膳・器具の洗浄・おやつの準備
給食の時間が終わったら下膳し、食器の洗浄や後片付けを行います。同時におやつの準備も始めます。
14時~おやつの調理や配膳、片付け
15時のおやつの時間に向けて、おやつの調理を行います。「おやつ=お菓子」というイメージがありますが、保育園のおやつはそれ以上に「足りない栄養を補う補助的なメニュー」という意味合いもあります。子どもは胃が小さいため、3度の食事だけでは必要な栄養を摂りきれないことがあり、そのため、お菓子だけでなくおにぎりや菓子パンなどの軽食をつくるケースもあります。
16時~下膳・調理室や器具の洗浄、消毒
おやつの時間が終わったら、下膳して調理器具や調理室の清掃・消毒を実施します。食中毒などの健康被害が出てしまうと、保育園全体の信用が失墜してしまいます。したがって、調理後の清掃や洗浄・消毒の作業は徹底する必要があるのです。
17時~翌日の打ち合わせ・1日の総括
ひと通りの調理と片付けが済んだら、1日の総括や翌日の献立についての打ち合わせを行ないます。延長保育でおやつを出している保育園の場合、夕方以降にも調理の作業があります。
下準備から片付けまで、作業量は決して少なくないことが把握できたのではないでしょうか。作業の割合としては調理と事務で、7対3の割合で圧倒的に調理業務が多いですが、細々とした事務作業も調理師の立派な仕事です。
保育園の調理師や調理補助員のやりがいと気をつけるべきこと
保育園の調理師や調理補助員には、やりがいがたくさんありますが、同時に大変なこともあります。
やりがい① 子どもたちに喜んでもらえる
子どもたちに「おいしい」と喜んでもらえるのはとても嬉しいもの。「どうすればおいしく食べてもらえるか」、「どう盛り付ければ喜んでもらえるか」といったことを考えながら工夫してつくったメニューであれば、喜びもひとしおです。「私たちの料理で子どもたちが喜んでくれている」と、モチベーションのアップにもつながるでしょう。
やりがい② 認可保育園であれば雇用も安定している
認可保育園で働く場合、飲食店の調理師と比較するとより安定した雇用で働ける傾向にあります。認可保育園の運営母体は自治体や行政であり、景気などに左右されにくいためです。飲食店やホテルなどと比べると、長く安定して続けられる仕事だといえます。
やりがい③ 保護者のサポート役になれる
「家の食事だけで十分な栄養が摂れているか心配」、「アレルギーが心配」と悩む保護者は少なくありません。保育園の調理師・調理補助員の役割はそんな悩みに寄り添い、栄養バランスのとれた給食やおやつを提供することでもあります。栄養面から子どもたちをサポートすることで、保護者も安心して子どもたちを預けられます。また、保育園によっては調理師や調理補助員が保護者と面談する機会もあります。保護者と直接話し合うことで、アレルギーなどにもより正確に対応できるようになるのです。
やりがい④ 子どもたちの食育に関われる
保育園の給食は、旬の食材を活かした献立を出すケースが少なくありません。旬の食材を子どもたちに食べてもらうことで、「季節の野菜はおいしい」、「旬の魚はおいしい」などさまざまな気づきを引き出すことができます。楽しく食べる気持ちや、食に対する気づきや興味を引き出し、食育にもつなげられるでしょう
保育園の給食やおやつは、子どもたちの健康に直接関わる大切なものです。保育園で調理師や調理補助員として活躍するためには、栄養学や調理の専門知識だけでなく子どもに関する基礎知識を身につけておくことも重要なのです。
気を付けるべきこと① 体力仕事であること
調理師や調理補助員の仕事は、基本的に立ち仕事です。重たい食材を運んだりすることもあります。
気を付けるべきこと② アレルギー対応に慎重さが求められる
アレルギーを持つ子どもたちに対しては、個別の対応が求められます。「どの子がどんなアレルギーを持っているのか」という把握はもちろん、保護者としっかり話し合ったうえで別の献立をつくるなどの対応が必要です。アレルギーは子どもの命にも関わります。アレルギーの知識を深め、アレルギー情報を踏まえた調理スキルを磨くことはスキルアップにつながります。
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